空舞う妖精
文才の無いヒトが書いたダメ文章倉庫です。ちなみに書き途中で放棄されたものが殆ど。連載中は日記サイト。管理人の日記はリンクよりどうぞ。
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3話「裏社会←仮タイトル」
母から貰った謎の書、”騎士王の書”。
それは、私の力の根源。
”前世”の記憶を持つ騎士王の書の管制人格”パラティヌス”とともに私は魔法の世界へ入ったの。
そして、私のクラスメート、高町なのはも私と同じで、”レイジングハート”と一緒に魔法の世界へ。
だけどいがみ合う2人の管制人格。
2人の”魔導師”は”デバイス”により切り離される寸前。
だけど、その危機は突破!
なのはちゃんは、”ジュエルシード”を改修するため。私は”魔法の世界”が知りたくて・・・。
魔法少女リリカルなのはナイト、はじまります。
第3話「裏社会」
「エクスプロージョン、ファイア!」
小高い丘の上を飛び回りながら藤原零奈は叫んだ。
とかっ!
目の前で花火が舞う。
それを見て、彼女は急停止して溜息をついた。
「あう・・・また、失敗・・・」
”騎士王の書”の形態のひとつ、”ランチャーフォーム”姿の零奈はがっくりと肩を落とすとバランスを崩して地面に突っ伏した。
「痛っ!痛たたたた・・・・」
零奈は座り込むと頭をさする。
<主、”ランチャーフォーム”は、装甲が厚い分防御は上がりますが、機動性も落ちますし、何より重いので気をつけてください>
「ぷぅ、分かってるよ。はぁ」
<お疲れですか?>
”騎士王の書”の管制人格、”パラティヌス”は少し間をおいて言った。
「大丈夫・・・うぅ、重い・・・・」
零奈はライフル型のデバイスに体重を乗せ、起き上がる。
<・・・やっぱり、”ランチャーフォーム”ではなく、”メイジフォーム”の訓練をしましょうか?>
「やだ、諦め、な、いぃぃ・・・」
ばたっ!
<主ぃ~、私は貴方をベッドまで運べませんよ~?>
「うぅぅ・・・お休み・・・」
<主、学校があるではないですか。
高町なのは様に会うのでは?>
「・・・!ああっ、今日学校か、ありがと、パラティヌス」
「はやく行きませんと遅刻しますよ>
「わかった」
零奈はさっさと起き上がると走り出す。
<ふう・・・>
パラティヌスは小さい溜息をつく。
もし、あのまま寝られてたら・・・ああ、寒気が・・・。
パラティヌスがもし人間の形を持っていたならばその顔は青ざめていただろう。
訓練をしている丘から程近い家に到着すると零奈はさっさとトーストをトースターに放り込み、冷蔵庫からジャムを取り出し、部屋の奥へ行く。
服を脱ぎ制服に着替える。
着替え終わるのと同時に”チンッ”と、子気味のいい音が聞こえる。
さっさとキッチンへ向い、トーストに苺ジャムを塗る。
「ねぇ、パラティヌス、”エクスプロージョン”、何で失敗しちゃうのかな・・・」
<そうですね・・・原因はいくらか考えられますが?>
「そっか」
<ですけど、一番当たっていると思うのは、魔力不足だと思います。
一番最初の起動で”カートリッジ”を使用したのは覚えてますか?>
「ああ、なんか”スラッシュ”とかって魔法を使うのにね」
<はい、主のリンカーコアは大きいですが、取り出し口が小さいようです。
・・・魔力に関して言えば、ほぼ無限です>
「・・・?」
<えっと、ペットボトルは焼酎の奴みたいに大きいのですが、飲み口が小さいのです>
美味いたとえになっていない気がするが、とりあえず、パラティヌスは言ってみる。
が、「そうか、そうだねっ!」と、本人は納得したようである。
<明日から、カートリッジを使用した訓練を行いたいと思います、いいですか?>
「わかった」
<では、カートリッジ製作ですが――>
それから簡単な説明をパラティヌスがする。
そして、実際に1つ作ってみる。
「わっ、簡単」
<本来はバックスがやるべき仕事ですけどね。
何気に作ろうと思えば簡単なんですよ?>
手に持った薬莢を光に当てて色々な角度から見てみる零奈。
鈍い金色を放つ円筒形のそれは、零奈の顔をキレイに映し出す。
「キレイ・・・」
鏡の様に自分を映し出す薬莢を零奈はまるで宝石のようだ、と思った。
本物の宝石は見たことがないけど、それでもその辺のレプリカ以上の輝きを持つソレは、多分、本物の宝石と同じくらいに輝いているのだろう。
光を反射して、眩く輝く薬莢。
零奈はうっとりとそれを眺め続けていた。
<学校をお忘れですか?>
零奈はふとパラティヌスの言葉で我に返った。
首にぶら下がっているペンダントを零奈は見やり、無理矢理笑顔を作ってみせる。
「うーうん、全っ然忘れていないんだからね?パラティヌス?」
<・・・・・・・りょ、了解・・・・>
それは、私の力の根源。
”前世”の記憶を持つ騎士王の書の管制人格”パラティヌス”とともに私は魔法の世界へ入ったの。
そして、私のクラスメート、高町なのはも私と同じで、”レイジングハート”と一緒に魔法の世界へ。
だけどいがみ合う2人の管制人格。
2人の”魔導師”は”デバイス”により切り離される寸前。
だけど、その危機は突破!
なのはちゃんは、”ジュエルシード”を改修するため。私は”魔法の世界”が知りたくて・・・。
魔法少女リリカルなのはナイト、はじまります。
第3話「裏社会」
「エクスプロージョン、ファイア!」
小高い丘の上を飛び回りながら藤原零奈は叫んだ。
とかっ!
目の前で花火が舞う。
それを見て、彼女は急停止して溜息をついた。
「あう・・・また、失敗・・・」
”騎士王の書”の形態のひとつ、”ランチャーフォーム”姿の零奈はがっくりと肩を落とすとバランスを崩して地面に突っ伏した。
「痛っ!痛たたたた・・・・」
零奈は座り込むと頭をさする。
<主、”ランチャーフォーム”は、装甲が厚い分防御は上がりますが、機動性も落ちますし、何より重いので気をつけてください>
「ぷぅ、分かってるよ。はぁ」
<お疲れですか?>
”騎士王の書”の管制人格、”パラティヌス”は少し間をおいて言った。
「大丈夫・・・うぅ、重い・・・・」
零奈はライフル型のデバイスに体重を乗せ、起き上がる。
<・・・やっぱり、”ランチャーフォーム”ではなく、”メイジフォーム”の訓練をしましょうか?>
「やだ、諦め、な、いぃぃ・・・」
ばたっ!
<主ぃ~、私は貴方をベッドまで運べませんよ~?>
「うぅぅ・・・お休み・・・」
<主、学校があるではないですか。
高町なのは様に会うのでは?>
「・・・!ああっ、今日学校か、ありがと、パラティヌス」
「はやく行きませんと遅刻しますよ>
「わかった」
零奈はさっさと起き上がると走り出す。
<ふう・・・>
パラティヌスは小さい溜息をつく。
もし、あのまま寝られてたら・・・ああ、寒気が・・・。
パラティヌスがもし人間の形を持っていたならばその顔は青ざめていただろう。
訓練をしている丘から程近い家に到着すると零奈はさっさとトーストをトースターに放り込み、冷蔵庫からジャムを取り出し、部屋の奥へ行く。
服を脱ぎ制服に着替える。
着替え終わるのと同時に”チンッ”と、子気味のいい音が聞こえる。
さっさとキッチンへ向い、トーストに苺ジャムを塗る。
「ねぇ、パラティヌス、”エクスプロージョン”、何で失敗しちゃうのかな・・・」
<そうですね・・・原因はいくらか考えられますが?>
「そっか」
<ですけど、一番当たっていると思うのは、魔力不足だと思います。
一番最初の起動で”カートリッジ”を使用したのは覚えてますか?>
「ああ、なんか”スラッシュ”とかって魔法を使うのにね」
<はい、主のリンカーコアは大きいですが、取り出し口が小さいようです。
・・・魔力に関して言えば、ほぼ無限です>
「・・・?」
<えっと、ペットボトルは焼酎の奴みたいに大きいのですが、飲み口が小さいのです>
美味いたとえになっていない気がするが、とりあえず、パラティヌスは言ってみる。
が、「そうか、そうだねっ!」と、本人は納得したようである。
<明日から、カートリッジを使用した訓練を行いたいと思います、いいですか?>
「わかった」
<では、カートリッジ製作ですが――>
それから簡単な説明をパラティヌスがする。
そして、実際に1つ作ってみる。
「わっ、簡単」
<本来はバックスがやるべき仕事ですけどね。
何気に作ろうと思えば簡単なんですよ?>
手に持った薬莢を光に当てて色々な角度から見てみる零奈。
鈍い金色を放つ円筒形のそれは、零奈の顔をキレイに映し出す。
「キレイ・・・」
鏡の様に自分を映し出す薬莢を零奈はまるで宝石のようだ、と思った。
本物の宝石は見たことがないけど、それでもその辺のレプリカ以上の輝きを持つソレは、多分、本物の宝石と同じくらいに輝いているのだろう。
光を反射して、眩く輝く薬莢。
零奈はうっとりとそれを眺め続けていた。
<学校をお忘れですか?>
零奈はふとパラティヌスの言葉で我に返った。
首にぶら下がっているペンダントを零奈は見やり、無理矢理笑顔を作ってみせる。
「うーうん、全っ然忘れていないんだからね?パラティヌス?」
<・・・・・・・りょ、了解・・・・>
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2話「魔法の世界へ、なの」
つい昨日、なんか狼みたいな変な物体に襲われたの。
絶体絶命の大ピンチ到来っ!?
と、思っていたら、お母さんから貰った白い鎖のかかった本が、何か喋りだしちゃったの。
<封印を解除してください、主。今がその時でしょう>って。
そしてその本、”騎士王の書”と、その管制人格、”パラティヌス”の力を使って敵を打ち破ったんだけど・・・。
魔法少女リリカルなのはナイト、始まります。
第2話「魔法の世界へ、なの」
「いくつかあるの?」
<はい>
「説明して?」
<了解、主。
まず一つ目は、先に使用した、”ソードフォーム”。
接近戦に特化したデバイス、”クロスナイト”を主装備とします。
二つ目、魔法戦に特化、特に広域魔法に特化したデバイス”シュピゲルトゲール”を主装備とする”メイジフォーム”。
三つ目は、砲撃戦に特化した”ランチャーフォーム”、使用デバイスは”ケルベロス”です。
四つ目は、情報戦に優れた”インターフォーム”、デバイスは”ディレクトリ”です。
後は、主の活躍次第で増えていきます>
「私の活躍?」
私、藤原零奈。
海鳴市の小学三年生。
の、筈なんだけど、つい昨日、”魔法少女”みたいなのになってしまったの。
お母さんが前にくれた金色の十字架の装飾がある白い本――パラティヌスは<はい>と答える。
<貴方が独自のアイデアで新たな魔法を作ることが可能です、もちろん、デバイスも。
そういった情報は、まだ必要ないでしょうけど>
パラティヌスはこの白い本、”騎士王の書”の管制人格、人工知能”AI”で、時空管理局とかって言う組織では”ロストロギア”と呼ばれているそうだ。
今のところ、パラティヌスはとても冷静で、頼りに出来ると思う。
「そっか・・・。ねぇ?」
<イエス・マスター?>
「私が造ったデバイスやその魔法は次の主へ行くの?」
<はい、だって最初は”ソードフォーム”だけでしたから>
「うん十人も主になったのに、数種しか増えてないんだ」
<それはですね、何と言いましょうか、まだ主の頭に入らないと思うのですが・・・。
まぁ、いずれ必要になる知識ですから説明しておきましょう。
ソードフォームの次に出来た”メイジフォーム”は、たまたまその主がデバイス”シュピゲルトゲール”をつくり、私に組み込みました。
ですけど、まだ使える魔法は殆どありません。
というわけで、その次の代の方々が、だんだんと、使用できる魔法を増やしていったんです。
私はその方々に育てられてきたんです>
「へぇ」
<まぁ、ああ、後、この書の役割は二つあります>
「何?」
<1つは、同系統の書、”夜天の書”の護衛です。
もう1つは、代が変わるにつれて世界を移動し、その世界の強い騎士や、使い魔などを記録していく事です。
その気になれば、主もその騎士たちを召喚できるようになります>
「へぇ、じゃあねえ、夜天の書って?」
<夜天の書は私とともに世界を移動し、その世界の魔法を記録していく役目を担っています。
夜天の書に入れられた魔法は、夜天の主ならば、使用可能になります。
あと、私、騎士王の書以外にも数種、一緒に渡った書があるんですけど、データが消去されていて、すみません>
パラティヌスは申し訳なさそうに、言う。
「そっか、ってことは、騎士王の書にない知識は、たとえパラティヌスが知っていた知識でも、データになければ、”忘れた”って扱いになるの?」
<そうでしょう、恐らく。
私、失礼ながらまだ全てを把握できているわけではありません。
何処かの世界で改編されて、とても危険な力を持っている可能性もありますし。
”前世”の私が知っていた知識でも、騎士王の書にサルベージされた時に、消去された可能性があります>
「前世?」
<失礼しました、忘れてください。
とにかく、主は魔法の訓練を重ねていく必要があるでしょう、私を持っている限り>
パラティヌスは<広域地形レーダー、”グランドマップ・サーチ・モード”起動、訓練に適した地形を捜索中>と言う。
「今から?」
<はい。遅かれ早かれ”時空管理局”がこの世界にやってくるでしょうから>
パラティヌスはその後、<二時の方向距離300に開けた場所があります。移動しましょう>と言う。
「ねぇ、思ったんだけどどうやって持っていけば?」
<サイズダウンします。・・・サイズダウン・レディ?>
「どうやって行使するの?それ」
<私が小さい姿を思い浮かべれば、大丈夫です>
「うん、じゃあ・・・パラティヌス・サイズ・ダウン」
するとパラティヌスは、騎士王の書は、小さくなった。
ペンダントサイズになると、<どうします?とりあえず、ペンダントとして使用できるように穴もつけましたが>とご親切に言ってきた。
「ありがと、ちょっとまって」
そう言うとペンダントと思われるような糸状の物を持ってきて、パラティヌスに通し、首にかけた。
扉を出て、鍵を閉める。
「えっと、位置、もう一回お願い?」
<はい、二時の方向、距離300、すぐそこの丘です>
「ありがと、パラティヌス」
階段を下りて、ゆっくり道を歩き、目的の丘へついた。
が、先客がいた。
「なのはちゃん?」
「零奈ちゃんだ、おはよう」
高町なのは。
同じクラスの子。
すると、パラティヌスは低い声で言った。
<気をつけてください、主。その方は魔導師です>
「えっ!?」
驚きのためか、大きな声で怒鳴っている。
「う、うそ、ばれてる、というかあのパラティヌスとかってのデバイスなの?レイジングハート」
なのはもビックリして赤い宝石に向かって言っている
<The linker core was detected.
And, it seems that that book is rosutorogia. >
「え、ペンダントが喋った、しかも英語ッ!」
零奈は驚いてびくびくしている。
<レイジングハート、私と主は”ジュエルシード”の回収に手を出すつもりはありません。
ですが、”夜天の書”に手を出すのなら私は容赦しません。おわかりで?>
<Of course, it understands.
I agree to the thing that "King knight book" doesn't cooperate chiefly.
"Book of the night heaven" is made a thing according to the main intention. >
―もちろん、分かっています。
”騎士王の書”が主に協力してくれない事も、承知しています。
”夜天の書”に関しては、主の意思に従う事にします。―
<覚悟は出来ているようで。
今ココで、打ち合ってもいいことはありませんし。
貴方の主は先日魔法に触れたばかり、私の主なんか昨日ですから>
どうやら、敵対しているようである。
レイジングハートについては、英語なので良くわからないけど、とにかくそれだけは分かる。
なのはも同じだった
私と零奈ちゃんのデバイス、”レイジングハート”と、”パラティヌス”は敵対しているのだと。
「え、えと、ねぇ?パラティヌス」
<イエス・マスター?>
「こう見えても私となのはちゃん、友達なんだよ?敵対しろって言ってるんでしょ?
レイジングハートも、パラティヌスも。私はそんなの、嫌だから」
零奈はキッパリと言い放つ。
<ですけれど、私達の目的――>
「なのはちゃんが、この世界の中でも強い人だったら?
強い人を記録するのが、騎士王の書、”パラティヌス”の役目でしょ?
レイジングハートは、スクライア一族に発掘されて、なのはちゃんのところに来て・・・。
それまで何万年生きてるの?
何万年も生きてるなら分かるでしょ?
人の友情はたとえ、指名でも、ね?心から敵対なんて出来ない」
「零奈、ちゃん・・・。
・・・うん、そうだよ!レイジングハート!
パラティヌスも、そうだよ?
仲良くしよう?遠まわしだけど、そう言っているんだよ?」
<<主・・・>>
レイジングハートは英語だが、レイジングハートとパラティヌスは2人を、”主”と呼んだ。
「反省できた?パラティヌス?」
<もちろんです>
「レイジングハート、零奈ちゃんは敵じゃないよ?わかった?」
<Jesus and my main ?>
―イエス・我が主?―
「そっか、じゃあ、なのはちゃん」
「うん」
パラティヌスを取って言った。
「パラティヌス」
<イエス・マスター?>
「シュピゲルトゲール、セットアップ!」
<アイ・サー、”騎士王の書”起動、メイジフォーム、展開、アームドデバイス”シュピゲルトゲール”を起動します...>
銀色光。
なのはは黙ってそれを見た。
そこに現れた、魔導師、零奈を。
全体的に白で銀色の装飾があり、ドレスでマントを羽織っている。
杖は、同じく銀色で、杖の先に装飾があり、装飾の真ん中にデバイスコアがあるようだ。
パラティヌスは、というと、前回と同じく左手に。
長い黒髪はポニーテールになっている。
「わぁ、すごい、凄いね、いきなり起動できるなんて!」
なのはは感激していた。
「じゃあ、私も。いい?ユーノ君?」
「凄いね!なのはも、零奈さんも」
「え、喋った、フェレット喋った!その子もデバイス?」
「違うよ!」と、フェレットの姿をした動物が言う。
「じゃあ、レイジングハート!」
<Setup>
桜色の光が辺りを包む。
そして、白いバリアジャケット姿のなのはが現れた。
「すごいね、なのはちゃんも」
「え~、零奈ちゃんのほうが強そうだよ、ねえ、じゃあ、一緒に訓練しよ?」
時空管理局所属時空航行船”アースラ”。
「騎士王の書?」
「ああ」
クロノ・ハラオウン執務官はモニターに目を走らせながら言った。
「闇の書とともに流れている書だ。騎士王の書がその世界にあるなら、恐らく闇の書や”騎士杖の書”などがその世界にあるはずだ」
「ふ~ん」
クロノの部下、エイミィは興味無さげに言う。
「それで、どうするの?多分、ロストロギアの危険性をあの子達は知らないかもよ?クロノ君」
「そうだな、・・・」
「ねぇ、パラティヌス?」
<何でしょう?>
「魔法は、”前世”のパラティヌスはどう思ってた?」
<・・・そう、ですね・・・。
ただ、仲間との誓いを果たすための、力、ですかね>
悲しげに、パラティヌスは言った。
「そっか・・・じゃあ、魔法の世界って、どんな世界かな・・・」
<・・・わかりません。
・・・・・・・さっきから思ってたんですけど、何か悩み事でも?>
夜風に当たりながら「そうかも」と、自嘲気味に零奈は言った。
魔法の世界は、広い。
自分はもう魔法の世界に入ってしまったのだから。
絶体絶命の大ピンチ到来っ!?
と、思っていたら、お母さんから貰った白い鎖のかかった本が、何か喋りだしちゃったの。
<封印を解除してください、主。今がその時でしょう>って。
そしてその本、”騎士王の書”と、その管制人格、”パラティヌス”の力を使って敵を打ち破ったんだけど・・・。
魔法少女リリカルなのはナイト、始まります。
第2話「魔法の世界へ、なの」
「いくつかあるの?」
<はい>
「説明して?」
<了解、主。
まず一つ目は、先に使用した、”ソードフォーム”。
接近戦に特化したデバイス、”クロスナイト”を主装備とします。
二つ目、魔法戦に特化、特に広域魔法に特化したデバイス”シュピゲルトゲール”を主装備とする”メイジフォーム”。
三つ目は、砲撃戦に特化した”ランチャーフォーム”、使用デバイスは”ケルベロス”です。
四つ目は、情報戦に優れた”インターフォーム”、デバイスは”ディレクトリ”です。
後は、主の活躍次第で増えていきます>
「私の活躍?」
私、藤原零奈。
海鳴市の小学三年生。
の、筈なんだけど、つい昨日、”魔法少女”みたいなのになってしまったの。
お母さんが前にくれた金色の十字架の装飾がある白い本――パラティヌスは<はい>と答える。
<貴方が独自のアイデアで新たな魔法を作ることが可能です、もちろん、デバイスも。
そういった情報は、まだ必要ないでしょうけど>
パラティヌスはこの白い本、”騎士王の書”の管制人格、人工知能”AI”で、時空管理局とかって言う組織では”ロストロギア”と呼ばれているそうだ。
今のところ、パラティヌスはとても冷静で、頼りに出来ると思う。
「そっか・・・。ねぇ?」
<イエス・マスター?>
「私が造ったデバイスやその魔法は次の主へ行くの?」
<はい、だって最初は”ソードフォーム”だけでしたから>
「うん十人も主になったのに、数種しか増えてないんだ」
<それはですね、何と言いましょうか、まだ主の頭に入らないと思うのですが・・・。
まぁ、いずれ必要になる知識ですから説明しておきましょう。
ソードフォームの次に出来た”メイジフォーム”は、たまたまその主がデバイス”シュピゲルトゲール”をつくり、私に組み込みました。
ですけど、まだ使える魔法は殆どありません。
というわけで、その次の代の方々が、だんだんと、使用できる魔法を増やしていったんです。
私はその方々に育てられてきたんです>
「へぇ」
<まぁ、ああ、後、この書の役割は二つあります>
「何?」
<1つは、同系統の書、”夜天の書”の護衛です。
もう1つは、代が変わるにつれて世界を移動し、その世界の強い騎士や、使い魔などを記録していく事です。
その気になれば、主もその騎士たちを召喚できるようになります>
「へぇ、じゃあねえ、夜天の書って?」
<夜天の書は私とともに世界を移動し、その世界の魔法を記録していく役目を担っています。
夜天の書に入れられた魔法は、夜天の主ならば、使用可能になります。
あと、私、騎士王の書以外にも数種、一緒に渡った書があるんですけど、データが消去されていて、すみません>
パラティヌスは申し訳なさそうに、言う。
「そっか、ってことは、騎士王の書にない知識は、たとえパラティヌスが知っていた知識でも、データになければ、”忘れた”って扱いになるの?」
<そうでしょう、恐らく。
私、失礼ながらまだ全てを把握できているわけではありません。
何処かの世界で改編されて、とても危険な力を持っている可能性もありますし。
”前世”の私が知っていた知識でも、騎士王の書にサルベージされた時に、消去された可能性があります>
「前世?」
<失礼しました、忘れてください。
とにかく、主は魔法の訓練を重ねていく必要があるでしょう、私を持っている限り>
パラティヌスは<広域地形レーダー、”グランドマップ・サーチ・モード”起動、訓練に適した地形を捜索中>と言う。
「今から?」
<はい。遅かれ早かれ”時空管理局”がこの世界にやってくるでしょうから>
パラティヌスはその後、<二時の方向距離300に開けた場所があります。移動しましょう>と言う。
「ねぇ、思ったんだけどどうやって持っていけば?」
<サイズダウンします。・・・サイズダウン・レディ?>
「どうやって行使するの?それ」
<私が小さい姿を思い浮かべれば、大丈夫です>
「うん、じゃあ・・・パラティヌス・サイズ・ダウン」
するとパラティヌスは、騎士王の書は、小さくなった。
ペンダントサイズになると、<どうします?とりあえず、ペンダントとして使用できるように穴もつけましたが>とご親切に言ってきた。
「ありがと、ちょっとまって」
そう言うとペンダントと思われるような糸状の物を持ってきて、パラティヌスに通し、首にかけた。
扉を出て、鍵を閉める。
「えっと、位置、もう一回お願い?」
<はい、二時の方向、距離300、すぐそこの丘です>
「ありがと、パラティヌス」
階段を下りて、ゆっくり道を歩き、目的の丘へついた。
が、先客がいた。
「なのはちゃん?」
「零奈ちゃんだ、おはよう」
高町なのは。
同じクラスの子。
すると、パラティヌスは低い声で言った。
<気をつけてください、主。その方は魔導師です>
「えっ!?」
驚きのためか、大きな声で怒鳴っている。
「う、うそ、ばれてる、というかあのパラティヌスとかってのデバイスなの?レイジングハート」
なのはもビックリして赤い宝石に向かって言っている
<The linker core was detected.
And, it seems that that book is rosutorogia. >
「え、ペンダントが喋った、しかも英語ッ!」
零奈は驚いてびくびくしている。
<レイジングハート、私と主は”ジュエルシード”の回収に手を出すつもりはありません。
ですが、”夜天の書”に手を出すのなら私は容赦しません。おわかりで?>
<Of course, it understands.
I agree to the thing that "King knight book" doesn't cooperate chiefly.
"Book of the night heaven" is made a thing according to the main intention. >
―もちろん、分かっています。
”騎士王の書”が主に協力してくれない事も、承知しています。
”夜天の書”に関しては、主の意思に従う事にします。―
<覚悟は出来ているようで。
今ココで、打ち合ってもいいことはありませんし。
貴方の主は先日魔法に触れたばかり、私の主なんか昨日ですから>
どうやら、敵対しているようである。
レイジングハートについては、英語なので良くわからないけど、とにかくそれだけは分かる。
なのはも同じだった
私と零奈ちゃんのデバイス、”レイジングハート”と、”パラティヌス”は敵対しているのだと。
「え、えと、ねぇ?パラティヌス」
<イエス・マスター?>
「こう見えても私となのはちゃん、友達なんだよ?敵対しろって言ってるんでしょ?
レイジングハートも、パラティヌスも。私はそんなの、嫌だから」
零奈はキッパリと言い放つ。
<ですけれど、私達の目的――>
「なのはちゃんが、この世界の中でも強い人だったら?
強い人を記録するのが、騎士王の書、”パラティヌス”の役目でしょ?
レイジングハートは、スクライア一族に発掘されて、なのはちゃんのところに来て・・・。
それまで何万年生きてるの?
何万年も生きてるなら分かるでしょ?
人の友情はたとえ、指名でも、ね?心から敵対なんて出来ない」
「零奈、ちゃん・・・。
・・・うん、そうだよ!レイジングハート!
パラティヌスも、そうだよ?
仲良くしよう?遠まわしだけど、そう言っているんだよ?」
<<主・・・>>
レイジングハートは英語だが、レイジングハートとパラティヌスは2人を、”主”と呼んだ。
「反省できた?パラティヌス?」
<もちろんです>
「レイジングハート、零奈ちゃんは敵じゃないよ?わかった?」
<Jesus and my main ?>
―イエス・我が主?―
「そっか、じゃあ、なのはちゃん」
「うん」
パラティヌスを取って言った。
「パラティヌス」
<イエス・マスター?>
「シュピゲルトゲール、セットアップ!」
<アイ・サー、”騎士王の書”起動、メイジフォーム、展開、アームドデバイス”シュピゲルトゲール”を起動します...>
銀色光。
なのはは黙ってそれを見た。
そこに現れた、魔導師、零奈を。
全体的に白で銀色の装飾があり、ドレスでマントを羽織っている。
杖は、同じく銀色で、杖の先に装飾があり、装飾の真ん中にデバイスコアがあるようだ。
パラティヌスは、というと、前回と同じく左手に。
長い黒髪はポニーテールになっている。
「わぁ、すごい、凄いね、いきなり起動できるなんて!」
なのはは感激していた。
「じゃあ、私も。いい?ユーノ君?」
「凄いね!なのはも、零奈さんも」
「え、喋った、フェレット喋った!その子もデバイス?」
「違うよ!」と、フェレットの姿をした動物が言う。
「じゃあ、レイジングハート!」
<Setup>
桜色の光が辺りを包む。
そして、白いバリアジャケット姿のなのはが現れた。
「すごいね、なのはちゃんも」
「え~、零奈ちゃんのほうが強そうだよ、ねえ、じゃあ、一緒に訓練しよ?」
時空管理局所属時空航行船”アースラ”。
「騎士王の書?」
「ああ」
クロノ・ハラオウン執務官はモニターに目を走らせながら言った。
「闇の書とともに流れている書だ。騎士王の書がその世界にあるなら、恐らく闇の書や”騎士杖の書”などがその世界にあるはずだ」
「ふ~ん」
クロノの部下、エイミィは興味無さげに言う。
「それで、どうするの?多分、ロストロギアの危険性をあの子達は知らないかもよ?クロノ君」
「そうだな、・・・」
「ねぇ、パラティヌス?」
<何でしょう?>
「魔法は、”前世”のパラティヌスはどう思ってた?」
<・・・そう、ですね・・・。
ただ、仲間との誓いを果たすための、力、ですかね>
悲しげに、パラティヌスは言った。
「そっか・・・じゃあ、魔法の世界って、どんな世界かな・・・」
<・・・わかりません。
・・・・・・・さっきから思ってたんですけど、何か悩み事でも?>
夜風に当たりながら「そうかも」と、自嘲気味に零奈は言った。
魔法の世界は、広い。
自分はもう魔法の世界に入ってしまったのだから。
1話「それは始まりなの」
ある日突然白い鎖のかかったきれいな本が、何か言ったように思えた。
知るためには、この鎖を解いてあげる、そのためには鍵が必要。
だけど、その鍵が見つからない。
私はそれがとても残念な気がした。
・・・だって、仲良くなれそうだから。
魔法少女リリカルなのはナイト、始まります。
第1話「それは始まりなの」
朝。
狭いワンルームのアパートのベッドの上で私は目が覚めた。
白いカーテンがふわりと飛ぶ。
「・・・ああ、昨日窓閉めるの忘れちゃったんだね。・・・くちゅっ!」
可愛いくしゃみをするとベッドを降りる。
ベランダに出る。
深呼吸。
「ふう、あさって清清しいね」
青い空。
「今日は雨は降らなさそう。天気予報のはずれだ。ラッキー」
棒読み子です、この子。
時計を見る。
「あ、やば、遅刻だ」
早足気味でベランダから部屋へと入りキッチンへ。
冷蔵庫からパンとジャムを取り出す。
パンをトースターへ放り込み、彼女はキッチンを出、ベッドの脇にかけてある制服を取る。
パジャマを脱ぎ、手馴れた手つきで制服を着る。
制服を着終えると同時に”チンッ”と、子気味のいい音が聞こえ、香ばしい匂いが漂ってくる。
再びキッチンへ向い、トースターからパンを取り、急いでジャムを塗り口に放り込む。
もぐもぐかみながらカバンを取り、窓を閉め、アパートの扉を開けた。
そして、部屋の鍵を閉め、廊下を走って、階段を駆け下りて、駐車場まで出る。
すると、バスが走り出そうとしていたのを急に止めた。
少し送れてバスの扉が開く。
「あら、おはよう、行儀悪いわよ?それに珍しいわね、遅刻寸前なんて」
担任の先生が声をかけてくる。
「すみません・・・もぐもぐ、ごくり。もう、大丈夫です。おはようございます」
「はいはい、じゃあ、バスに乗って?」
「はい」
バスに乗る。
手近な席に腰を下ろす。
一番後ろには亜麻色の髪をした、ツインテールの子や、黒髪の美しい子が居る。
少し微笑んで、「おはよう」と声をかける。
後ろの席の子達が「おはよう」と返して笑ってくる。
私は藤原零奈。
海鳴市の小学3年生。
カバンを開けて、白い本を出す。
白い本は金色の装飾が施され、とても、美しい。
だけど、この本、鎖に縛られていて、中身を読むことが出来ない。
真ん中の鍵穴に合う鍵を今度作ってもらおうか、などと思う。
母が誕生日にくれたこの本。
中を読んでみたい。
そんな事を思っていたら、”声”が聞こえたような気がした。
<貴方は、私の力を必要としていますか?>
――え・・・?
<この魔―書を使用するにはリン――・――と呼ばれるものが必要であり、我を受け入れられる――力、そして、そのある――が必要です...>
――貴方は、誰?誰なの?
「だれなのっ!?」
気が付けば、叫んでいた。
「藤原さん、危ないですよ?座ってください」
「あ、はい」
呆気に取られた、気分だった。
本をカバンに仕舞い、ぼおっと窓の外を見た。
美しかった・・・。
帰り。
ぼおっと歩きながら考える。
あの声はアレだけじゃなかった。
授業中にも何度か<必要ならば封印を解除してください>と言っていた。
良くわからないので放置していたのだが、あの声を聞いてる時は外の声は全然聞こえないようだ。
それに、周りの視界も授業中に聞いた声の場合は、黒くなる。
外の世界とは遮断されたような、意識の世界だった。
ちゃんと気を持てば元の世界に戻る事は出来たから、その時は気にしなかったけど・・・。
頭に余裕が出来て考え始めてしまう。
考えていたら――
グァアアアアア~~ッ!
「ひっ!」
黒いシルエットが見える。
まるでつや消し処理をしたような、立体感のない何か。
驚いて零奈は尻餅をついた。
体から力が抜けて、立ち上がれない。
うう、どうしよう・・・。
その時、また、声がした。
<封印を解除してください、主。今がその時でしょう>
「え?封印?解除?何それっ!?」
<鍵です。さあ、早く>
「鍵?そんなの何処――」
あった。
あったよ、あった。
金色の、長細い奴。
「あ、あれ?」
<はい、そうです、主>
どうにか、拾ってみる。
爆風で目は殆ど見えない。
手探りで探した。
カバンから本を出し、鍵穴にさしてみる。
鎖が、取れた。
そして・・・。
本が、宙に、浮いた。
<マスター・コントロール・レディ、騎士甲冑を展開します、主>
「え?え?」
周りを光が包んだ。
とても強い、金色の光。
そして、金色から、銀へと変わる。
あ、元の視界になった。
私、ドレス着てる。
白いドレスに銀色の防具がついていた。
前にはあの白い本があって、浮いている。
<騎士甲冑展開完了、デバイス情報転送。術式転送、藤原零奈を主に登録、さあ、どの装備で?>
「えっと、えっと・・・?」
<ソードですね?了解しました、術式展開、形状変更開始>
本は指輪――ブレスレットと指輪を鎖で繋いで中央に白い宝石がある――になり、それが左手に。
右手には、剣。
「え・・・?」
<了解しました、カートリッジ・ロード、魔力刃を展開>
剣の刃が金色に輝く。
<さあ、戦闘開始ですよ?主>
「どうやって、戦うのよっ!」
<振れば分かります、キャリアが大事です、キャリアが>
「わかった、もう知らないもんっ!」
走る。
黒い良くわからない襲撃者のシルエットが近づくにつれて良くわかる。
狼だ、犬でも、猫でもない。
それを見るととても恐くなる、さっきいきなり襲われた時より。
<主、”スラッシュ”の使用を推奨します>
「スラッシュって?」
この間も、走る、走る。
ガチャガチャ装備がなっている。
<その質問を肯定とみなします。よろしくて?>
「・・・?」
<沈黙を肯定とみなします、・・・レディ?>
「ふぇ?」
<使用可能ってことです>
「むむわかんないっ!」
敵の腹にぶつかりそうになるが、垂直に跳躍。
「うぉっりゃああああ亜~~~ッ!」
上から、一閃、力任せに。
着地、崩れ落ちる。
敵は、そのまま何もなかったかのように消えた。
「い、一体、何・・・?」
<ロストロギアの暴走だと思います>
手の甲で喋る何か。
「ロストロギアとかってのも気になるんだけど、さっきから誰?貴方」
<失礼しました、私はこの”騎士王の書”の管制人格”パラティヌス”と申します>
「パラティヌスか、宜しくね?私は――」
<藤原零奈、私を4万年ぶりに起動させた第53代目の主です>
「ああ、何で知ってるの?」
<主の情報は契約時に読み取りました、主も術式等のデータは転送されてるはずです。ロストロギアについても>
パラティヌスは落ち着いた女性の声だった。
「ん~、どうやって引き出すの?」
<まだ難しいですか、わかりました、・・・空間モニター起動>
零奈の目の前に透明な何かが出る。
それに目をやると、たくさんの情報が表示されている。
それと同時に、”魔法”や、”ロストロギア”、”パラティヌス”についての情報が頭に流れてきた。
<私がこうやって指示を出さないとやっぱり大変ですね>
「どういうこと?」
<主の脳はまだ成長段階にあります、記憶容量も小さい。私が送った情報が膨大故に、主の脳で処理しきれなかったってことです。でもしっかりと記憶はされています。私の指示で思い出せたのがその証拠です。脳が成長期なので、処理しきれないのは当然なのです>
「へえ」
<まぁ、その他の詳しい事は後で。今はさっさと帰宅する事にしましょう。良い子は真っ直ぐ帰らないと>
「うん、そうだね」
<では、・・・騎士甲冑解除、シャットダウン、レディ>
パラティヌスがそう言うと零奈は元の制服姿に戻っていた。
知るためには、この鎖を解いてあげる、そのためには鍵が必要。
だけど、その鍵が見つからない。
私はそれがとても残念な気がした。
・・・だって、仲良くなれそうだから。
魔法少女リリカルなのはナイト、始まります。
第1話「それは始まりなの」
朝。
狭いワンルームのアパートのベッドの上で私は目が覚めた。
白いカーテンがふわりと飛ぶ。
「・・・ああ、昨日窓閉めるの忘れちゃったんだね。・・・くちゅっ!」
可愛いくしゃみをするとベッドを降りる。
ベランダに出る。
深呼吸。
「ふう、あさって清清しいね」
青い空。
「今日は雨は降らなさそう。天気予報のはずれだ。ラッキー」
棒読み子です、この子。
時計を見る。
「あ、やば、遅刻だ」
早足気味でベランダから部屋へと入りキッチンへ。
冷蔵庫からパンとジャムを取り出す。
パンをトースターへ放り込み、彼女はキッチンを出、ベッドの脇にかけてある制服を取る。
パジャマを脱ぎ、手馴れた手つきで制服を着る。
制服を着終えると同時に”チンッ”と、子気味のいい音が聞こえ、香ばしい匂いが漂ってくる。
再びキッチンへ向い、トースターからパンを取り、急いでジャムを塗り口に放り込む。
もぐもぐかみながらカバンを取り、窓を閉め、アパートの扉を開けた。
そして、部屋の鍵を閉め、廊下を走って、階段を駆け下りて、駐車場まで出る。
すると、バスが走り出そうとしていたのを急に止めた。
少し送れてバスの扉が開く。
「あら、おはよう、行儀悪いわよ?それに珍しいわね、遅刻寸前なんて」
担任の先生が声をかけてくる。
「すみません・・・もぐもぐ、ごくり。もう、大丈夫です。おはようございます」
「はいはい、じゃあ、バスに乗って?」
「はい」
バスに乗る。
手近な席に腰を下ろす。
一番後ろには亜麻色の髪をした、ツインテールの子や、黒髪の美しい子が居る。
少し微笑んで、「おはよう」と声をかける。
後ろの席の子達が「おはよう」と返して笑ってくる。
私は藤原零奈。
海鳴市の小学3年生。
カバンを開けて、白い本を出す。
白い本は金色の装飾が施され、とても、美しい。
だけど、この本、鎖に縛られていて、中身を読むことが出来ない。
真ん中の鍵穴に合う鍵を今度作ってもらおうか、などと思う。
母が誕生日にくれたこの本。
中を読んでみたい。
そんな事を思っていたら、”声”が聞こえたような気がした。
<貴方は、私の力を必要としていますか?>
――え・・・?
<この魔―書を使用するにはリン――・――と呼ばれるものが必要であり、我を受け入れられる――力、そして、そのある――が必要です...>
――貴方は、誰?誰なの?
「だれなのっ!?」
気が付けば、叫んでいた。
「藤原さん、危ないですよ?座ってください」
「あ、はい」
呆気に取られた、気分だった。
本をカバンに仕舞い、ぼおっと窓の外を見た。
美しかった・・・。
帰り。
ぼおっと歩きながら考える。
あの声はアレだけじゃなかった。
授業中にも何度か<必要ならば封印を解除してください>と言っていた。
良くわからないので放置していたのだが、あの声を聞いてる時は外の声は全然聞こえないようだ。
それに、周りの視界も授業中に聞いた声の場合は、黒くなる。
外の世界とは遮断されたような、意識の世界だった。
ちゃんと気を持てば元の世界に戻る事は出来たから、その時は気にしなかったけど・・・。
頭に余裕が出来て考え始めてしまう。
考えていたら――
グァアアアアア~~ッ!
「ひっ!」
黒いシルエットが見える。
まるでつや消し処理をしたような、立体感のない何か。
驚いて零奈は尻餅をついた。
体から力が抜けて、立ち上がれない。
うう、どうしよう・・・。
その時、また、声がした。
<封印を解除してください、主。今がその時でしょう>
「え?封印?解除?何それっ!?」
<鍵です。さあ、早く>
「鍵?そんなの何処――」
あった。
あったよ、あった。
金色の、長細い奴。
「あ、あれ?」
<はい、そうです、主>
どうにか、拾ってみる。
爆風で目は殆ど見えない。
手探りで探した。
カバンから本を出し、鍵穴にさしてみる。
鎖が、取れた。
そして・・・。
本が、宙に、浮いた。
<マスター・コントロール・レディ、騎士甲冑を展開します、主>
「え?え?」
周りを光が包んだ。
とても強い、金色の光。
そして、金色から、銀へと変わる。
あ、元の視界になった。
私、ドレス着てる。
白いドレスに銀色の防具がついていた。
前にはあの白い本があって、浮いている。
<騎士甲冑展開完了、デバイス情報転送。術式転送、藤原零奈を主に登録、さあ、どの装備で?>
「えっと、えっと・・・?」
<ソードですね?了解しました、術式展開、形状変更開始>
本は指輪――ブレスレットと指輪を鎖で繋いで中央に白い宝石がある――になり、それが左手に。
右手には、剣。
「え・・・?」
<了解しました、カートリッジ・ロード、魔力刃を展開>
剣の刃が金色に輝く。
<さあ、戦闘開始ですよ?主>
「どうやって、戦うのよっ!」
<振れば分かります、キャリアが大事です、キャリアが>
「わかった、もう知らないもんっ!」
走る。
黒い良くわからない襲撃者のシルエットが近づくにつれて良くわかる。
狼だ、犬でも、猫でもない。
それを見るととても恐くなる、さっきいきなり襲われた時より。
<主、”スラッシュ”の使用を推奨します>
「スラッシュって?」
この間も、走る、走る。
ガチャガチャ装備がなっている。
<その質問を肯定とみなします。よろしくて?>
「・・・?」
<沈黙を肯定とみなします、・・・レディ?>
「ふぇ?」
<使用可能ってことです>
「むむわかんないっ!」
敵の腹にぶつかりそうになるが、垂直に跳躍。
「うぉっりゃああああ亜~~~ッ!」
上から、一閃、力任せに。
着地、崩れ落ちる。
敵は、そのまま何もなかったかのように消えた。
「い、一体、何・・・?」
<ロストロギアの暴走だと思います>
手の甲で喋る何か。
「ロストロギアとかってのも気になるんだけど、さっきから誰?貴方」
<失礼しました、私はこの”騎士王の書”の管制人格”パラティヌス”と申します>
「パラティヌスか、宜しくね?私は――」
<藤原零奈、私を4万年ぶりに起動させた第53代目の主です>
「ああ、何で知ってるの?」
<主の情報は契約時に読み取りました、主も術式等のデータは転送されてるはずです。ロストロギアについても>
パラティヌスは落ち着いた女性の声だった。
「ん~、どうやって引き出すの?」
<まだ難しいですか、わかりました、・・・空間モニター起動>
零奈の目の前に透明な何かが出る。
それに目をやると、たくさんの情報が表示されている。
それと同時に、”魔法”や、”ロストロギア”、”パラティヌス”についての情報が頭に流れてきた。
<私がこうやって指示を出さないとやっぱり大変ですね>
「どういうこと?」
<主の脳はまだ成長段階にあります、記憶容量も小さい。私が送った情報が膨大故に、主の脳で処理しきれなかったってことです。でもしっかりと記憶はされています。私の指示で思い出せたのがその証拠です。脳が成長期なので、処理しきれないのは当然なのです>
「へえ」
<まぁ、その他の詳しい事は後で。今はさっさと帰宅する事にしましょう。良い子は真っ直ぐ帰らないと>
「うん、そうだね」
<では、・・・騎士甲冑解除、シャットダウン、レディ>
パラティヌスがそう言うと零奈は元の制服姿に戻っていた。